「第23回総合診療の指導力育成事業(徳島GMラウンド)」(2/14開催)
徳島県内で地域医療に関わる若手医師のキャリア形成支援事業の一環として、県内の臨床研修指定病院が持ち回りで実施している教育カンファレンス(徳島GMラウンド)の第23回を徳島健生病院が担当しました。
今回は講師として日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター センター長 藤沼康樹先生をお招きいたしました。大学病院での開催ということもあり、学生をはじめ多くの職種や、科を超えた大勢の医師にご参加いただきましたことに感謝しております。
藤沼先生は、『「卓越したジェネラリスト診療」入門』の著者であり、この書籍の中で、複雑困難な時代を生き抜く新たな医師像を提示されています。複雑な患者に対する思考法と臨床医のメソッドの体系化についてわかりやすく記載され、若手からベテランまで必読の書とされる本です。
今回のプログラムは以下のとおりです。
日時:令和8年2月14日(土)
会場:徳島大学病院 日亜ホールWhite〔ホール大〕
総合司会:大倉 佳宏(健生石井クリニック 所長)
13:00~ 受付
13:30~13:35 開会挨拶:西良 浩一先生(徳島県地域医療支援センター長)
13:35~14:55 特別講演
座長:佐々木 清美(徳島健生病院 院長)
講師:藤沼 康樹先生
テーマ:「人と生活を診るための臨床的方法論 ツール・ボックス」
14:55~15:10 質疑応答
15:10~15:20 休憩
15:20~16:05 症例検討1
司会進行:大倉 佳宏
発表:瀧 彰太(徳島健生病院 1年次研修医)
16:10~16:15 休憩
16:15~16:55 症例検討2
司会進行:大倉 佳宏
発表:上田 敦史(徳島健生病院 総合診療・家庭医療専攻医)
16:55~17:00 閉会挨拶:松田 知子(徳島健生病院 副院長)
今回のテーマである「人と生活を診るための臨床的方法論」では、医学的診断治療で解決できない場面に対応するための道具(方法論)について、主訴よりも受診理由、既往歴でなくライフサイクルやトラウマヒストリーに着目すること、「生活史の破綻」の状態を分類して、家庭医・GPがとる4つの対処方法があることを示されました。
また、ベテラン医師が日常に行っている、診察室での身体診察やその際に添える言葉が、「儀式」として患者を「癒し」、回復に向かうプロセスを援助しているという、新たな視点で解説されました。
家庭医療学の様々な文献や、あるいは医学を超えた幅広い知識に基づく内容で、気さくなお人柄もあり楽しい講演でした。
症例検討では、研修医・専攻医が提示した困難事例2症例について、グループディスカッションで様々な意見を出し合い、藤沼先生からも的確なサジェスチョンを頂きました。
・症例1:多彩な主訴で救急搬送を繰り返す高齢女性に対してのアプローチ
頻回に救急搬送をされる背景としての心理的・社会的要因を探るべく、搬送受け入れ時の聞き取りや、介護・福祉への聞き取りも行ったが、自宅に不在、介護拒否など不明な点が多く手詰まり状態であった。
→頻回救急搬送事例は世界的にも社会的問題となっており、自宅訪問や、救急隊も含めた地域会議を開くこと、家族図を検討することでアプローチのヒントが生まれることがあると、ご教示いただきました。
・症例2:進行性の硬膜下血腫に対する治療を拒むアルコール依存患者にBPSモデルを用いて介入した一例
患者は、妻の他界後、統合失調症の息子と二人暮らしとなり、アルコール依存と借金で債務超過となり生活が破綻していた状態であった。
経済的問題と長男の将来に対する不安から、治療拒否をしていると推測し、多面的アプローチで経済的問題の解決、息子との関係修復、自立支援を行い、治療に対する受け入れが得られた。幸い病状は改善し、自宅への退院支援を行うことができた。
心理・社会的な側面から患者の「病い」に対する理解を深めたことで、医学的な問題に対しても理解が得られ、患者と医療者側が同じゴール設定をすることができた。
→素晴らしいアプローチであった。アルコール依存、息子との関係も継続する問題である。
家族の関係が根っこにあることが多く、家族図を描いていくことがヒントになると、ご教示いただきました。
参加されていた医学生は1~3年生で、講演の内容は大学で学ぶ医学とは違う視点でのアプローチだったため戸惑ったかもしれません。
しかし、実際のプライマリケアの現場では、対応する事例の1割程度が医学的アプローチでは解決できない困難事例といわれています。
今回ご講演頂いた内容も、症例検討の中でも、からまって一見修復できないようなところから、問題点を見つけて整理し、落としどころを見つけていくことが、患者の問題解決やhealing(癒し)につながるということを教えていただきました。
ベテラン医師にとっては非常に役立つ内容で興味深く、また毎日の普通の診療を大事にすることの重要性を再認識いたしました。
最後に、本カンファレンスの開催にあたりご支援・ご協力を賜りました地域医療支援センターの皆様、ならびに臨床研修指定病院をはじめ県内医療機関の皆様に心より御礼申し上げます。
本取り組みが今後の若手医師の育成と地域医療の発展に寄与していくことを願っております。
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