第6回「総合診療の指導力育成事業(徳島GMラウンド)」
『考える医療』の育成
人は、見たことのないものに対しては必要以上に臆病となる。そして、百聞は一見にしかずということで最近の学生、研修医の希望は、症例が集まる都会志向や救急医学を経験したいという流れとなる。これはもっともな流れであるが、本当に必要とされる能力は、経験したことのある症例を診療する能力だけではなく全く経験したことのない症例に遭遇してもそれを十分に考察し解明できる能力であり、換言するとさまざまな症例に応用できる思考プロセスを育成することが必要であると考える。
そこで今回は、医療を科学する、つまり知識ではなく、問題点を洗い出しそれにアセスメントを加えていくというシンプルではあるが、考える医療の原点について、テーマを血液ガス異常・電解質異常に絞り、講師として聖路加国際病院の腎臓内科医長の長浜正彦先生を招聘、ご指導いただきました。
プログラム
阿南共栄病院で2014年2月22日(土)に開催しました。
<Program>
12:30~13:00 受付
13:10~14:40 症例検討1
14:40~14:55 休憩
14:55~16:25 症例検討2
16:25~16:40 休憩
16:40~17:40 講演会
17:40~17:55 質問コーナー
18:25~20:25 懇親会(長浜先生を囲む会)
GMラウンドの実施状況
参加者は、学生、研修医、医師、コメディカル総勢46名であり盛況に終わりました。
ラウンド内容は2症例。症例1は、副甲状腺機能亢進症の症例を用いてプロブレムリストの作り方からその考え方について解説して頂きました。症例2では、糖尿病性ケトアシドーシスの血液ガス所見の解析、並びにその輸液治療の基礎的な考え方について、ワークショップ形式で学生と研修医に考えてもらいながら講義を進行して頂きました。
医学的なエビデンスとは、医療を科学することにより出来上がるものであるということを、今回のテーマである血液ガスの読み方、電解質異常(Na異常、Ca異常)について整理をしながら教えて頂きました。
余談としてアメリカと日本の医学の違いについて我々日本人が「なんとなく」医療を行っている現状、日本の研修を終えた後にアメリカでの医療に従事した時に、その医療根拠を尋ねられた際、日本の研修ではその根拠を考える医療ではなかったことに気付いたという経験談や初期臨床研修はジェネラリスト養成であるべきでありその上に専門性を重ねるべきであるという信念をお聞かせ頂きました。さらにクリティカルパスは標準化医療では無く、さまざまな医療の局面での物事の考え方が統一化されていることが標準化であることについてご指摘頂きました。
総評
総評として、ワークショップ形式としてそれぞれの課題に取り組んでもらうことにより、個々の知識共有ができ、さらに問題解決能力が向上したと考えられました。
問題点としては、講師の先生はフランクに接するように努めてくれていましたが、学生並びに研修医側がやや討論に対して臆していた感が否めません。これについては、参加型研修の受け方について、今後の学生、研修医の指導・教育の中で研修の受け方について意識改革が必要と思われます。