「第19回総合診療の指導力育成事業(徳島GMラウンド)」(2/19開催)

 徳島県内で地域医療に携わる若手医師のキャリア形成支援事業の一環として、県内の臨床研修指定病院が持ち回りで実施している教育カンファレンス(徳島GMラウンド)の第19回を徳島赤十字病院が担当しました。
 今回は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりWEB開催とし、講師に福井大学医学部地域医療推進講座特命教授 寺澤秀一先生より「研修医当直御法度外伝」をテーマにご講演いただきました。プログラムは以下の通りです。

12時30分~13時00分 受付(zoom入室)
13時00分~14時00分 開催挨拶:赤池 雅史先生(徳島県地域医療支援センター 副センター長)
           第一部 躓き冷や汗事例 事例発表 研修医3名
14時00分~14時15分 休憩
14時15分~15時15分 第二部 躓き冷や汗事例 事例発表 研修医3名
15時15分~15時30分 休憩
15時30分~17時00分 特別講演「研修医当直御法度外伝」
           講師 寺澤 秀一 先生
             (福井大学医学部 地域医療推進講座 特命教授)
           閉会挨拶:後藤 哲也(徳島赤十字病院 院長)
           総合司会:髙田 忠明(徳島赤十字病院 集中治療科 副部長) 

 参加者は、初期臨床研修医36名、医師25名、学生3名、メディカルスタッフ1名、事務6名の計71名が参加しました。
 寺澤先生は、研修医にとってバイブル的書籍になっている「研修医当直御法度」「救急診療の極意」「話すことあり、聞くことあり」など多数の著者であります。また、ER診療や若手医師の指導者として長年ご活躍されてこられました。
 第一部・第二部は研修医が経験した“躓き冷や汗事例”を症例提示してディスカッションを行いました。
 事例1は、主訴、頭痛で来院。CTには明らかな所見はなしと判断し帰宅するも、その後専門医が脳出血を発見し救急搬送になった躓き事例。
 事例2は、深夜未明の吐血患者。出血源を検索し右下顎の歯肉から動脈性の出血と判明したが、用手的圧迫止血を実施するも出血は止まらず。救急スタッフも対応困難、結果、救急病院へ搬送となった事例。
 事例3は、心渦部痛、嘔吐を主訴した患者に、心筋梗塞を疑い心電図・トロンボ・心エコーを実施。心筋梗塞の否定は出来なかったが明らかな所見は見つからなかった。指導医によりSPO2が低いのを発見、Dダイマーの上昇もあり造影CTから「肺血栓塞栓症」と診断。“思い込み”は誤診を招きかねない冷や汗事例。
 事例4は、畑で倒れていた男性の救急搬送。主訴、眠気・脱力、来院時には意識清明。本人曰く酎ハイ500mlを2本飲んだため眠くなったとのこと。身体所見では脳血管障害を疑う所見はなく酔っ払いか?指導医より脱力有のためMRIを指示、診断結果は急性期脳梗塞であった。救急隊からの情報も大切であったこと希望的観測に気を付けることを学んだ事例。
 事例5は、20歳代女性、右耳出血・聴力低下のため男性に付き添われ救急受診。専門外来へ案内するため『お父さんさんはこちらへ』『え、、、彼氏ですが』【Killer Word】を無意識に口走ってしまい現場が凍り付いた事例。
 事例6は、73歳男性、食事中に突然意識消失したためドクタカー要請され救急搬送されたが、来院後には意識清明。失神?迷走神経反射?心血管性失神を除外のため一応CT撮影。STEMIに合併した左室自由壁破裂による失神と判明した冷や汗事例。
 以上6事例、研修医自身が関わった“躓き冷や汗事例”の問診から診断に至る困惑した過程を、ユーモアを交えて発表しました。
 最後の講演では研修医が発表した症例を振り返り、症例毎に実践に活かしやすい事例を取り上げ、分りやすく解説して頂きました。臨場感溢れる語り口調でぐんぐん引き込まれ、寺澤先生の想いや経験が詰まった和やかな研修会となりました。