Physician Scientistを目指して
私は、患者さんの全身をマネージメントできるような医師を志し、内科を選択いたしました。そのなかで循環器内科医を選択したのは、患者さんの命を救う、つまり生命の維持のためには心臓が動いていることが不可欠であるという単純な原理からでした。
研修医、レジデント時代は、とにかく基本手技の修得に必死でしたが、よく指導医の先生から“脊髄反射で治療するな”、“ファーストフード店のセットメニューのような医療をするな”と注意されたものでした。それは、症状から紋切り型の検査・治療をするのではなく、個々の患者さんの症状・病態に応じた適切な医療をするようにということでした。
それを実践するためには、病態を正しく理解することが不可欠です。そのためには症状・理学所見・検査結果から、分子レベルまでさかのぼり病態を考察する必要があります。研究生活がどのような意味を持つのか当時は自分自身よくわかっていませんでしたが、先輩医師の勧めもあり、大学院に進学し、その後米国において研究生活を体験しました。研究生活を体験してみて、複雑な臨床病態を以前より深く洞察できるようになったことが、自分でも実感できます。“新規治療法”や“創薬”のための研究ももちろん重要ですが、臨床医が研究をおこなうことは、“病態を深く理解するため”、そして“真の意味での総合力を養うため”に重要であると思います。一通り臨床研修を終えたあと研究生活に飛び込むことを迷っている方には、ぜひよき指導者のもとで研究生活に没頭することをお薦めします。そして研究能力を有する臨床医すなわち”physician scientist“として、その知識や経験を臨床に還元することがよりよい医療につながると信じております。
私自身も、今後の自分の進むべき方向を模索中ですが、いま与えられていること・できることを一生懸命するという単純な原理のもと精進していきたいと思っています。